News2olds:知新 → 温故

一覧 
*** 月刊(?)ウェブログ風の寸評 ***   →ブログ【2】(2019.12〜2016.5)
                        →ブログ【1】(2016.4〜2005.2)
                        ブログに添付した【詳細別紙】のリスト

 2021.8 オリパラアプリ発注プロセスの検証報告書
 2021.7 「接触確認アプリCOCOA からの教訓」を読んで
 2021.7 「思考の外在的行為化の場としての仮想空間」を読んで
 2021.6 オリパラアプリの予算を約73億円から38.5億円に減額

 2021.6 地方公共団体情報システムの標準化
 2021.4 接触確認アプリ「COCOA」の不具合の報告書を読んで
 2021.4 デカルトのコギト・エルゴ・スムについて
 2021.3 みすほ銀行のシステム障害は単純なプログラムミス

 2021.2 「クラブハウス」は「仮想サロン」と類似
 2021.2 新型コロナ接触確認アプリの不具合を4カ月放置
 2021.1 デジタルディバイド対応は20年近く前の政策だった
 2021.1 ワンストップサービスは20年前の政策だった

 2020.12 「HER-SYSはなにが問題だったか」を読んで
 2020.12 患者急増で、感染者データ集約システムへの入力が遅延
 2020.12  政治資金関係オンラインシステムが利用されず

 2020.11 「脳科学からプログラミング教育を考える」を読んで
 2020.10  東証事故の原因は設定値ミスとテスト漏れ
 2020.10 15年前の悪夢:パスポート電子申請システム再び
 2020.9  感染者情報管理の新システムの問題点とは

 2020.8 品質よりも納期を優先した国のシステムとは
 2020.7 「特別定額給付金─何が問題か,今後どう改善すべきか」を読んで
 2020.7 「国や地方の情報システムが個々ばらばら」との指摘は遅すぎ
 2020.6 マイナンバーによるオンライン申請の失敗の原因は?

 2020.5 二重払いの銀行振り込みの後処理について
 2020.5 「新実存主義」を読んで
 2020.3 「人工知能の今:画像認識」を読んで
 2020.1 善の研究とα=ω

 2019.12 二つの文化:自然科学と人文科学
 2019.12 狂言師は型をプログラミング
 2019.12 失敗したe-Japan戦略
 2019.12 日本の15歳の読解力が世界で15位に後退

 2019.11 人生100年を支えるデジタルツインとIntelligent Clone
 2019.11 文部科学大臣の身の丈発言と教育の機会均等
 2019.10 続:利用されない行政システムの開発がなくならない
 2019.9 職場でのチャットの利用が増えている
 
 2019.8 「IT事件史(1990年):Σ計画失敗が判明」を読んで
 2019.7 「最強囲碁AI アルファ碁解体新書」を読んで
 2019.6 プログラミング心得の普遍性
 2019.6 (続)初任給に格差 → 優秀なIT・AI人材の確保
 2019.5 改元と『考えることを考える』を考える
 
 2019.4 利用されない行政システムの開発がなくならない
 2019.4 AI人材・IT人材不足数の予測について
 2019.3 ミンスキーの心の6階層モデルについて
 2019.3 航空機墜落事故2件は、またもソフトウェア不良が原因か
 2019.1 AIシステム検証へのニューロンカバレッジの有用性について

 2018.12 情報処理技術遺産 構造化プログラミング言語SPL 認定(後日談)
 2018.12 経団連の就活ルール廃止表明と政府案に一言
 2018.11 「AIと美学・芸術」特集を読んで
 2018.10 幼児の自己中心言語と内言の関係
 2018.10 「孤独の発明 または言語の政治学」を読んで

 2018.9 「IT事件史(1992年):IBM一強時代が終焉 オープン勢台頭」を読んで
 2018.8 働き方改革で26年前の電子技術者の問題は解決している?
 2018.8 3銀行の合併初日に3つのシステム障害とは
 2018.8 「IT事件史(2005年):誤発注で損失400億 責任めぐり10年裁判」を読んで
 2018.7 「IT事件史(2011年):みずほ「悪夢」再び 震災で混乱」を読んで
 2018.7 「意識とメタ過程」特集を読んで

 2018.7 「物理学とAI」特集を読んで
 2018.6 「IT事件史 1999年:「Y2K」の緊張走る」を読んで
 2018.6 「IT事件史(2002年):みずほ銀が大規模システム障害」を読んで
 2018.6 差別発言をしたチャットボットTay(2年前)への追加コメント
 2018.6 情報処理技術遺産 構造化プログラミング言語SPL 認定

 2018.5 解説「子どものコモンセンス知識」でヴィゴツキーが引用されている
 2018.5 「国交省のチェックツールに不具合」を読んで
 2018.5 人材の不足と育成:今日のAIと80年代のIT
 2018.4 機械学習工学とソフトウェア工学の共通点と相違点
 2018.4 「IT事件史 1982年のIBM産業スパイ事件」を読んで
 2018.4 「サボリのススメ」を読んで

 2018.3 システム開発プロジェクトの成功率が10年前より上昇!
 2018.2 東大病院の電子カルテシステムでトラブルの原因は?
 2018.2 仮想通貨をゼロ円で売買したシステムの不具合とは?
 2018.1 「サービス設計12箇条」を読んで
 2018.1 「AIは哲学できるか」を読んで
 2018.1 「新春大予測 20の技術が変える未来」特集を読んで

 2017.12  「脳情報科学が拓くAIとICT」特集を読んで
 2017.12  「脳科学とAI のフロンティア」特集を読んで
 2017.10  大手メーカーの出荷前の品質検査の不正
 2017.10  システム開発失敗の責任は発注側にありとの逆転判決
 2017.9  衛星「ひとみ」のプログラムミスの道義的責任で5億円とは?
 2017.9  総務省のAI開発ガイドラインは有用?

 2017.8  共産党批判でサービス停止のチャットボットの再教育とは?
 2017.7  東電システム障害の真相が明らかに?
 2017.6  情報処理技術遺産 Fortran&HARP 認定
 2017.6  「展示会で,学生お断り」の変更
 2017.5  日本臓器移植ネットワークのプログラムミスとは

 2016.12 番外編:メルボルン訪問2016→1980→1956
 2016.11 1枚のカードからATMシステム停止となったプログラムミスとは
 2016.10 「受援力」強化にはIT活用が不可欠!
 2016.9 アクティブ・ラーニングは「議論自由」のこと?
 2016.9 大人の脳(海馬)の新生ニューロンが記憶力を左右する

 2016.9 番外編:チャスラフスカの逝去を悼む
 2016.8 人工知能60周年における第1次,第2次ブームでは
 2016.6 利息計算を手作業で10年以上実施してきたシステムとは?
 2016.5 新幹線の電光掲示板故障の本当の原因は?
 2016.5 衛星「ひとみ」がプログラムのミスで運用断念とは残念!

             →さらに古いブログ(2016.4〜2005.2)


2021.8
「接触確認アプリCOCOA からの教訓」を読んで


 事業費削減に関連したデジタル改革相の発言が話題となった
 オリパラアプリ(オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ(仮称))の
 発注プロセスを検証した報告書が8/20に公開された。
 (4件の記事を参考)
       → 【詳細別紙】
 
 ・2か月前の以下のブログで、ソフトウェア工学的観点での問題を述べている:
    2021.6  「オリパラアプリの予算を約73億円から38.5億円に減額」
   
 【抜粋】 (→★部分はコメント)
 <2021.8.20の記事>
 ・民間企業の参考見積書作成に、担当者が「税込み70億でお願いします」と依頼。
  また別の企業が作成した参考見積書を他社に送ってもいた。
 
   →★官製談合防止法の違反では?
 
 ・民間企業の社長が、仕様書の作成に関わり、アプリの再受託者になっている
 
   →★落札した企業がこの会社に再委託した理由を明確にする必要あり。
     この会社への再委託を前提とする仕様があれば、官製談合では?
 
 <2021.8.21の記事>
 ・複数社から見積もりを取り、適正な予定価格を決めるため、
  見積もりを拒んだ企業に押印も担当者の名前もいらないなどと頼んでいた
 
   →★手段と目的をはき違えたお粗末な話。
     「複数社から見積もりを取る」という形式のみにこだわり、
     「適正な予定価格を決める」という業務上の責任(国民への責任)を果たさず
 
 ・発注を担ったIT室幹部が関わったシステムがアプリに一部採用され、
  民間出身のこの幹部は、国の発注事業で自ら利益を得られる予定だった
 
   →★国家公務員倫理規定に違反しているのでは?
 
 以上


2021.7
「接触確認アプリCOCOA からの教訓」を読んで


 情報処理学会の最新号に掲載された、下記の特別解説では、
 接触確認アプリCOCOAのずさんなプロジェクト管理の実体が明らかにされている。
 
 ・特別解説「接触確認アプリCOCOAからの教訓」情報処理,62(8),384-392
 
 COCOAの不具合については、すでに下記の2件のブログで言及した:
 
   2021.4  「接触確認アプリ「COCOA」の不具合の報告書を読んで」
 
   2021.2   「新型コロナ接触確認アプリの不具合を4カ月放置」
 
 上記4月のブログでは、厚労省の報告書へのコメントとして、   
 『プロジェクト管理が全くされていなかったという一言に尽きる
 と述べたが、本解説では、その実態が具体的に記載されている。
 
 ★詳細 →  <別紙参照>
 
 以上


2021.7
「思考の外在的行為化の場としての仮想空間」を読んで


 人工知能学会誌の最新号の下記の解説は、思考方法の習得に関する、
 コンピュータによる学習支援について述べており、私の修士論文
 「思考過程の数学的表現と模擬実験」との関連で、興味を持った。
 <文献>
 思考の外在的行為化の場としての仮想空間 ─学習支援の立場から─
 人工知能学会誌、Vol.36、No.4,pp.476-479 (2021/7)
 
 詳細は別紙に譲るが、以下の点が私の修論に関係していた:
 
 ・思考の多くが内的な行為としても、一部が外在的行為化されることで、
  それに連なる思考を方向づけできるとの説明に関して、
  修論では、思考過程は、内的な拡散と集中の繰り返しのサイクルで表現され、
  集中度がある値を超えると言語化されて外部に出力されるので、
  この言語化は、本解説での外在的行為化と言えるかも。
  
 ・外的対象に対する外的な知的行為が、外言とその内在化を通して一般化した
  内言による内的な知的行為として形成されていくという、
  ガリペリンの知的行為の多段階生成説が紹介されているが、
  外言、内言という表現から、修論で注目したヴィゴツキーとの関連が気になった。
 
  この引用元の文献[東洋 編:思考と言語、講座心理学8、東大出版会,1970]は、  
  私の修論でも参考文献の4番目に掲載し、今も所持しており、
  その中に、ガリペリンはヴィゴツキーの考え方の流れを引くとの記述があり、納得。
 
 そのほか、知識工学関連の記述部分にも興味を持った。
 
 ★詳細 →  <別紙参照>
 
 以上


2021.6
オリパラアプリの予算を約73億円から38.5億円に減額


 事業費削減に関連したデジタル改革相の発言が話題となった
 オリパラアプリ(オリンピック・パラリンピック観客等向けアプリ(仮称))の
 経緯を調べてみた。4件の記事を参考にした。
       → 【詳細別紙】
 【抜粋】
 <2021.2.25の記事>
 ・1/14に数社で構成されるコンソーシアムと契約
 ・主な機能は健康管理機能。
  *日々の体温を記入。高熱が続いた場合はPCR検査を促す
  *陽性反応が出れば、感染者管理支援システムHER-SYSに引き継ぐ
 ・内閣IT室は、4月以降にテストを開始し、7/23以降に本格稼働
 <2021.4.2の記事>
 ・コロナ禍で海外観客の受け入れ断念で、アプリの見直しや予算の圧縮を検討
 <2021.6.1の記事>
 ・予算を、当初の約73億2000万円から38億5000万円に圧縮し、
  ベンダーと5/31に再契約
 ・顔認証による会場での入退場やGPSによる位置情報の把握の削除
 <2021.6.12の記事>
 ・国や自治体によるシステム発注は民間システムより高くなりがちな理由:
 (1)発注者が求める要件(仕様)が不明確で契約後も変わることが多い
 (2)仕様の変更が多いために納期の余裕がなくなり多くの技術者が必要になる
 (3)追加予算が認められにくいため最初から事業費を多めに見積もる
 
 【ソフトウェア工学的観点でのコメント】
 ★作業スケジュールは、設計・開発・テストが1月〜3月となっているが、
  1月の契約時点で、まともな要求仕様書が存在しているとは思えない。
 ★官公庁システムの失敗事例によくある「品質より納期優先」では?
 ★1/14の契約から4.5か月後の5/31に再契約で、7月の本格稼働が不変?
 ★発注者側に要求仕様書作成能力がない場合、外部の業者に委託すべき。
 ★まともな要求仕様書が無ければ、その後の設計・開発・テストの工数が見積もれず、
  開発の入札に応募する業者は、損失リスクの少ない高めの見積書を作成することになる
 ★今回、まともな契約書が作成されていたのか疑問。
 ★過去の関連ブログ(2021.4) 「接触確認アプリ「COCOA」の不具合の報告書を読んで」
  結論:「結局、プロジェクト管理が全くされていなかったという一言に尽きる」
 
 以上


2021.6
地方公共団体情報システムの標準化


 朝日の記事(2021.5.30)
  『自治体システム統一、道険し 政府「25年度末までに」、現場は「精神論」』 によると
 全国の1741市区町村が住民の情報を管理するシステムに関し、
 政府が標準規格をつくり、これに基づいたシステムに移行させる
 「地方自治体情報システム標準化法」が5/12に成立したとのこと。
 
 関連する総務省の資料:
  「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案の概要」 の要点
 ・事務処理の共通性、住民の利便性の向上及び行政運営の効率化の観点から、
  標準化の対象となる事務を特定
 ・データ連携、サイバーセキュリティ、クラウド利用等
  各情報システムに共通の事項の基準(省令)を策定
 
  このような記事を読むと、次のような、実現しなかった過去の提言を思い出してしまう。
 
 ●疑問1:17年前の下記の重点項目が実現していない原因が不明
 2004.6.15の 「e-Japan重点計画-2004」(IT戦略本部)では、
 「5.電子政府・電子自治体の推進」の「(1) 基本的考え方」において、
 以下の記述あり:
  『今後これら基盤を活用し、すべての地方公共団体においてIT を利用した質の高い
   行政サービスを提供していくためには、重複投資を回避するための
   業務・システムの標準化・共同化や、IT 化を支える人材の育成等に係る
   地方公共団体の取り組みに対し支援を行っていく必要がある』
 
 ●疑問2:10年前の国の支援策の反省と今後の役割が実現していない原因が不明
  2011.6の総務省の 「ICT地域活性化懇談会 提言(案)」 では、
 「第2章 課題解決に向けたICT政策の方向性」の
 「3 今後の国の役割と支援の在り方」において、以下の記述あり:
   『ICTによる地域活性化を推進する上で国が適切な役割を果たす』
   『各地方自治体のハブとしての役割を担うことに重点を置いていく』
 
 ●最近の関連ブログ
 ・2021.1  ワンストップサービスは20年前の政策だった  
 ・2020.7  「特別定額給付金─何が問題か,今後どう改善すべきか」を読んで 
 ・2020.7  「国や地方の情報システムが個々ばらばら」との指摘は遅すぎ 
 ・2020.6  マイナンバーによるオンライン申請の失敗の原因は? 
 
  →  <詳細別紙>
 
 以上


2021.4
接触確認アプリ「COCOA」の不具合の報告書を読んで


 COCOAの不具合については、下記のブログで言及した:
   2021.2  新型コロナ接触確認アプリの不具合を4カ月放置
 
 本件に関して、4/16に厚労省から以下の報告書が公開された。 <厚労省ホームページ>
 ・接触確認アプリ「COCOA」の不具合の発生経緯の調査と再発防止の検討について(概要)
 ・接触確認アプリ「COCOA」の不具合の発生経緯の調査と再発防止の検討について(本体)
 
 このうち、概要を読んだ感想として、
 結局、プロジェクト管理が全くされていなかったという一言に尽きる。
 下記の10項目のほとんどが不十分だった。
 
    →  <詳細別紙>
 
 【プロジェクト管理の10項目】
 拙著 「ソフトウェア工学(第3版)」 (朝倉書店)の「3.4 プロジェクト管理」から引用
 
 『プロジェクト管理の知識体系PMBOKの10項目の知識エリア』
  ・統合管理     :ステークホルダの期待に応えて要求を達成
  ・スコープ管理   :目標達成のための作業設定と成果物の検証
  ・時間管理     :各工程の工数を見積もり,進捗を管理
  ・コスト管理    :各工程のコストを見積り、実績管理
  ・品質管理     :品質評価方法を決め,適宜,評価を実施
  ・人的資源管理   :スキルを有する要員の計画を立て、その確保
  ・コミュニケーション管理:情報収集,配布,保管,検索実施
  ・リスク管理    :納期,予算,品質のリスク予測と対応策
  ・調達管理     :外注先選定や契約内容などの外注管理
  ・ステークホルダ管理:利害関係のある関係者との意思疎通
 
 以上


2021.4
デカルトのコギト・エルゴ・スムについて


 2021.4.3の朝日の記事 「(古典百名山:98)デカルト『方法序説』 大澤真幸が読む」
 書評に「■考える私は存在するのか」という見出しを付け、
 最後に、評者自身の意見が述べられている。
 「私は考える」ので「考える私は存在する」、との論理は単純すぎると述べ、
 その理由として、私が考えているとき、その思考の対象として、
 それを考えている私の存在は絶対にありえないからだ、とのことである。
 
 これは、オブジェクトレベルとメタレベルの記述を想定すれば、当然であろう。
 私も、過去に思考過程のモデル化の研究の中で、以下のような記述を残している。
 
 ・ 考えている私を考えている私は誰?
 ・『考えることを考える』という一人二役的困難さのために、
   一方の役を熱演しすぎると、他方がおろそかになる
 
   →  「詳細別紙」
 
 以上


2021.3
みすほ銀行のシステム障害は単純なプログラムミス


 日経BPの記事(2021.03.02)
  「みずほ銀行システム障害の全容、データ更新のオーバーフローが発端に」によると、
 2/28にみずほ銀行のATMやネットバンキングの一部の取引ができなくなり、
 ATMからキャッシュカードや通帳を取り出せなくなった障害の原因は、
 定期預金25万件と一定期間取引のない口座45万件のデータ更新処理を実施中に、
 不必要な取引データの「取り消し情報管理テーブル」でオーバーフローが発生したとのこと。
 
【コメント】
 ★事故の原因として、報道記事では「メモリー容量不足」という表現が多いが、
  テーブルオーバーフローのチェックコードがなかったという、
 「プログラミングの基本に関する単純ミス」の表現としては違和感あり。
 
 <参考:オーバーフローのチェック漏れに関する過去のブログ6件>
 2018.7  「IT事件史(2011年):みずほ「悪夢」再び 震災で混乱」を読んで
 2016.5  新幹線の電光掲示板故障の本当の原因は?
 2016.2  オーバーフローのチェック漏れがなくならない
 2015.6  オーバーフローのチェック漏れがなくならない
 2011.4  みずほ銀行の振込み処理トラブル
 2011.1  新幹線システム障害の本当の原因は?
 
 以上


2021.2
「クラブハウス」は「仮想サロン」と類似


 最近話題の招待制の音声配信SNS「クラブハウス」の記事(2021.2.5) 
  『急増する音声SNS「クラブハウス」って?』の中に、
 『研究室で仕事をしている時に、学生らが訪ねてくるイメージ』という記述があった。
 当研究室は、同じコンセプトで25年前に『仮想サロン』を開発して利用した経験あり。
 
【類似点】
  参加者が顔写真などの画像で表示されている。
 (参考サイト) 「Javaを使って開発した仮想サロン」
 ただし、1995年時点では、音声は使えず、テキストによる会話。
 
【過去の関連ブログ】 「2019.9 職場でのチャットの利用が増えている」
 仮想サロンの詳細は、本ブログで紹介している。
 
 なお、情報処理学会での発表の中では、
 『V-Saloon は、現在我々の研究室で以下のように利用されているが、
 使用頻度としては、学生と先生の対話が最も多い』と述べている。
 
 以上


2021.2
新型コロナ接触確認アプリの不具合を4カ月放置


 2/3の朝日の記事 『発見遅れたCOCOA不具合、厚労省「実機テストせず」』によると、
 9/28に、iPhoneユーザに濃厚接触でないのに通知がいく不具合を直したが、その時
 アンドロイドユーザに濃厚接触なのに通知がいかない、という新たな不具合を
 作りこんでしまった。この不具合について、SNSや報道で指摘されたが、
 件数が少なかったので、4カ月間放置してしまった。
 
 【ソフトウェア工学の視点でのコメント(→★部分)】
 
 問題1:アプリ変更後、基本的な動作テストのみ実施
 →★今回の変更目的が、iPhone対応の機能不備の修正だったので、
   iPhoneを用いた実機テストのみ実施したと思われる。
   これは、ソフトウェアテストの基本を無視したもの。
   プログラムを変更したときは、これまで正常に動作していた部分に
   誤りを作りこむことがあるので、改めて全体をテストする必要がある。
 
 問題2:不具合報告の件数の少ないものを放置
 →★まず、すべての不具合の報告は、記録票に残さなくてはならない。
   今回の場合、カスタマーサポートにユーザから連絡があった時点で、
   [日時、記録者、不具合の現象]などを記録して、不具合対策者に送付し、
   その対策者が、[対策日時、対策者、対策箇所、対策内容]などを記入し、
   プロジェクト管理者に報告する。対策不要の場合もその旨記入。
 (プロジェクト管理の基本)
 
 問題3:プログラム構造(モジュール分割)が保守容易な構成でない
 →★今回はスマホの機種(iPhone、アンドロイド)対応の処理があった。
   当然、機種依存の各処理モジュールは、独立に作成し、共通モジュールとの
   結合度を最小化しておけば、iPhone対応モジュールを変更しても、
   アンドロイド対応モジュールに影響しなかったはず。
 
 【拙著: ソフトウェア工学(第3版)での対応部分】
  問題1:7.4節「テスト手順」(回帰テスト、regression testing)
  問題2:8.4節「不良分析」(不良記録票(バグ票))
  問題3:5.2節「設計の評価基準」(モジュール結合度)
 
 以上


2021.1
デジタルディバイド対応は20年近く前の政策だった


  2021.1.18の首相の施政方針演説 → <全文>
 の「デジタル改革」中に、以下の内容がある。
 『高齢者や障害者、デジタルツールに不慣れな方々もしっかりサポートし、
  誰もが、デジタル化の恩恵を最大限に享受できる社会をつくり上げてまいります』
 
 ★20年近く前の計画が、今も実現していないことが不思議!
 
 【過去の関連資料】
2002.6.18
 「e-Japan重点計画-2002」:IT戦略本部
 (関連部分の抜粋:p.95)
 III.横断的な課題 >3.デジタル・ディバイドの是正
  >(2) 年齢・身体的な条件の克服
 『年齢、身体的な条件により情報通信技術の利用機会及び活用能力の格差が生じないよう、
  地方公共団体等における施設のバリアフリー化、障害者や高齢者、子ども等に配慮した
  情報提供等のバリアフリー化や情報通信関連機器・システム等の開発を推進する。
 <4> 障害者、高齢者、子どものための情報通信関連機器・システム、サービスの開発等』
 
2004.6.15
 「e-Japan重点計画-2004」:IT戦略本部
 (関連部分の抜粋:p.118)
 IV.横断的な課題 >3.デジタル・ディバイドの是正
 > (2) 年齢・身体的な条件の克服
  (注)2年前の上記の重点計画と同じ内容
 
2004.3(拙著)→ <詳細>
 「ソフトウェア工学(第2版)」(朝倉書店)
 第1編 ソフトウェアの動向 >1.情報化社会の光と影
 >1.4 解決されるべき課題
 『情報アクセス能力の格差が新たな差別を生み出すデジタルデバイド問題など,
  解決されるべき課題は多い.』
 
 以上


2021.1
ワンストップサービスは20年前の政策だった


 2021.1.18の首相の施政方針演説 → <全文>
 の「デジタル改革」中に、以下の内容がある。
 『あらゆる手続が役所に行かなくてもオンラインでできる、
  引っ越した場合の住所変更がワンストップでできる、
  そうした仕組みをつくります』
 
 ★20年前の計画が、今も実現していないことが不思議!
 (例)米国   MOVING 
 
 【過去の関連資料】
2001.1.22
 「e-Japan戦略」:高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部
 (関連部分の抜粋:p.10)
 II.重点政策分野 >3.電子政府の実現 >(3) 推進すべき方策
 ><2>官民接点のオンライン化
 『2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続きを
  インターネット経由で可能とする。類似業務の統廃合とシステム化を進め、
  ワンストップサービスを実現する』
 
2004.6.15
 「e-Japan重点計画-2004」:IT戦略本部
 (関連部分の抜粋:p.17)
 II.2005年の目標達成への施策の重点化・体制整備と2006年以降に向けての布石
 >〔1〕2005年の目標達成への施策の重点化 >〔1-1〕加速化5分野
 >5.電子政府・電子自治体の推進 >(2) 具体的施策
 <1>ワンストップサービスの整備
 『成果目標:e-Govと各府省のシステムとの連携等により複数手続を一括して
  オンライン申請できるワンストップサービスを2005年度までに整備するなどにより、
  オンライン申請における国民の利便性の向上を図る。
 ウ)電子政府の総合窓口(e-Gov)を活用した手続のワンストップ化』
 
1997.12(拙著)→   <詳細>
 「エンドユーザ指向の分散アプリケーションフレームワークwwHwwと例題への適用」,
  JISA会報, No.48, 1997.12.
 「2.応用システム」で引越しの窓口業務のオンライン化に言及(p56〜p57)
 
2001.3(拙著)→ <詳細>
 「絶えざる変化に対応するエンドユーザ主導型アプリケーション開発技法」、
  情報処理学会 第62回全国大会 特別トラック(4)
 「IT革命を支えるソフトウェア開発技術」講演論文集 6H-01、pp.87-92
 <「2. エンドユーザ主導の必要性」から抜粋>
 『IT革命が流行語になっている一方で、転居に伴う新住所、氏名、
  電話番号などの記入を数十回繰り返し、その大半は郵送または
  窓口への訪問による提出を伴っているのが現状である』
 
 以上

追記(2021.4.1):過去のブログ
2011.3
  引っ越しワンストップサービスの最近の事情


2020.12
「HER-SYSはなにが問題だったか」を読んで


 下記の特別解説は、新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム
 HER-SYSについて、利用者の視点で、問題点が具体的に指摘されている。
 
 ・特別解説:HER-SYSはなにが問題だったか ─先行導入,本導入,改修提案を振り返って
  情報処理 Vol.62 No.1 pp.4-9(2021年1月号)(2020 年10 月23 日受付)
 
 以下のブログでは、システム利用者への要求分析の不足を指摘してきたが、
 本解説には、その具体的な内容が記載されている。
 
 ・2020.9 「感染者情報管理の新システムの問題点とは」
 (抜粋)『要求仕様書が、多様なステークホルダー・利用者の視点で作成されていない』
 
 ・2020.12 「患者急増で、感染者データ集約システムへの入力が遅延」
 (抜粋)『最も重要なステークホルダーは、医療機関での入力担当者だが、
      システムの要求分析段階での調査が不十分だったのではないだろうか』
 
 【本解説における関連内容の一部分】
 ・当初の要件定義には,複数の住所や管轄保健所の概念がなかった.
 ・名寄せが不完全なために重複届出を見逃すことがある
 ・従来システムに比べ、入力項目が10 倍以上に増えているが,論理チェック機能がない
 ・発生届出先の管轄保健所は、400以上の保健所からの選択なので,誤選択しやすい
 ・保健所の負担軽減のためのシステムと言いながら,負担は増えている
 
 【ソフトウェア工学の観点でのコメント】
  →★本解説の内容から、利用者視点なしのシステム開発だったことは明白!
    今どきのシステム開発で、利用者無視の要求仕様が作成されたことは驚き!
  →★機能のみを重視し、使用性を軽んじた結果、システムの利用率を達成できなかった
 
    ★詳細 → <別紙参照>
 
 以上
 
 追伸:
 本特別解説については、12/24に情報処理学会に
 「読者の意見」として、下記を投稿した。
 『 e-Japan発表以来の20年間、利用されない行政システムの多くは、
  利用者視点の要求分析の欠如でした。
  本解説は、その問題点を見事に具体的に指摘しています。
  現在、デジタル庁の設立にかかわる人の必読書と思います。』
 以上


2020.12
患者急増で、感染者データ集約システムへの入力が遅延


 NHKニュース(2020.12.13)
   「新型コロナ 国の感染者データ集約システム 入力が現場の負担に」
 <要点>
 ・患者が急増する北海道では、医療機関が入力作業に対応しきれず、
  先月のデータ(5600人余り)のおよそ3割が未入力(12/10時点)
  *保健所は、医療機関から感染状況をファックスで受け取る(従来の方法)
  *応援職員を保健所に派遣するも、患者の聞き取りなどに人手がかかる
  *医療機関の直接入力による保健所の負担の軽減という目的は未達成
 
 ・全国の感染状況のリアルタイムでの把握という目的も未達成
 ・国は自治体のホームページの感染者のデータを取りまとめ、統計データを公表
 ・7月以降の検討で、以下のシステム改修を実施:
  *入力データの明らかな誤りの通知機能の導入
  *入力項目数をおよそ3分の1の40程度に削減
 ・個人情報の取り扱いなどで一部の自治体との調整が難航し、
  保健所を設置している155のすべての自治体への導入は10月に完了
 
 【ソフトウェア工学の観点でのコメント】
 
 ・本ブログは、下記のブログの続編:
  2020.9 感染者情報管理の新システムの問題点とは
 
 ・本システム導入の目的のうち、
  *「全国の感染状況のリアルタイムでの把握」は、迅速な入力が前提
  *「医療機関の直接入力による保健所の負担の軽減」も、
   医療機関での迅速な入力が前提
  *結局、本システムの最も重要なステークホルダーは、医療機関での入力担当者だが、
   システムの要求分析段階での調査が不十分だったのではないだろうか。
   その結果、「想定外」の状況が発生して、システムが所期の目的を達成できていない
  
 以上


2020.12
政治資金関係オンラインシステムが利用されず


 朝日の記事(2020.12.12)「国会議員関係の政治資金報告書 オンライン提出1.13%」
 <要点>
 総務省提供の政治資金関係申請・届出オンラインシステムについて
 ・2005年のシステム導入以来、国は約36億円を投じたが、有効に使われていない
 ・2009年に会計検査院は、利用率の低さを総務省に指摘した
 ・2010年に、国会議員が関係する政治団体にオンライン提出の努力義務を課した 
 ・2013年度までに利用率60%達成の目標を設定していた(総務省)
 ・2019年分の収支報告書について、2546の国会議員関係政治団体の利用率1.13%
 ・システムを使わない理由は、
  「選管に紙で持参すると軽微な記載ミスを指摘してもらえる」
  「大量の領収書をスキャンして添付するのが手間だ」など
 
 【ソフトウェア工学の観点でのコメント】
 ・相変わらず、要求分析段階で、利用率の想定が甘い。
  「2013年度までに利用率60%」の目標は、単なる願望だったのでは?
 ・「軽微な記載ミス」は、システム利用時に自動検出すべきもの
 ・「スキャンの手間」は、その都度スキャンすれば、管理の簡素化の利点が大きい
 
 【過去の利用率に関する指摘】
 ・関連する学会発表(拙著): → < 詳細 >
   「システムの利用率は要求分析の対象では?」情報処理学会
    ウィンターワークショップ2010・イン・倉敷 論文集、pp.39-40(Jan.2010)
 
 ・以下は「利用率」問題に言及した過去のホームページ(6件):
  2020.10  15年前の悪夢:パスポート電子申請システム再び
  2020.9  感染者情報管理の新システムの問題点とは
  2019.10  続:利用されない行政システムの開発がなくならない
  2019.4  利用されない行政システムの開発がなくならない
  2015.9   メタボ検診: システムのミスで十分活用できず
  2009.11  いつまで繰り返す電子政府の電子申請システムの無駄
  
 以上


2020.11
「脳科学からプログラミング教育を考える」を読んで


 情報処理 Vol.61 No.11(2020.11)の解説論文(pp.1120-1125)
 「脳科学からプログラミング教育を考える」の、
 副題「プログラミング的思考は汎化するのか?」について、
 小学校でのプログラミング教育の目的という観点で興味を持った。
 
 【要約:抜粋】
 ・2020年から施行の小学校学習指導要領総則によると、
  プログラミング教育の狙いは、論理的思考力を育むこと
 ・ソースコードの理解課題において、活動が増加した脳の部位:
  *下頭頂小葉:数字と文字の組合せによる関係性把握
  *運動前野:構文理解におけるワーキングメモリ機能、注意機能
  *下前頭回:統語レベルでの意味処理に関連した言語処理
  *中側頭回:単語レベルの意味処理にかかわる言語処理
 ・初心者がプログラミング学習すると前頭葉下部に可塑的変化あり
 ・プログラミング学習に伴う一般的な論理的思考力の向上は不明
 
 【コメント】
 →★私の持論:プログラミングの本質は、段取りや手順を考えること
   例1:運動会の実施にかかわるすべての人たちの行動を記述する
     (事前準備、時系列&並行処理での関係者の役割実施の段取り)
   例2:個人でカレーライスを作る流れを明記する
     (材料準備から食事の提供まで)
 →★問題解決の処理アルゴリズムを考案する能力と
   それをプログラミング言語で表現する能力は別のものでは?
 →★以下の2例に類似性があるのでは?
   *処理の流れは記述できるが、プログラムの記述は不得意
   *自分の考えを明瞭に表現できるが、英語での表現は苦手
 
  ★詳細 → <別紙参照>
  
 以上


2020.10
東証事故の原因は設定値ミスとテスト漏れ


 10/1に東証の株式売買システムで障害が発生し、終日停止した。
 東証の 「arrowhead の障害に関する原因と対策について」によると、
 共有ディスク装置1号機のメモリ故障を制御機構が検知し、
 切替え用設定値に従って、2 号機に自動的に切り替えられるはずが、
 設定値に間違があり、自動切替えに失敗した。
 
 【ソフトウェア工学の観点でのコメント】
 「メモリ故障に起因する障害パターン」のテスト漏れがあった。
 ・漏れたテスト項目:「1号機のメモリ故障が発生」→「2号機に自動的に切替」
 これをテストしていれば、「切替え用設定値」の間違いが発見できた。
 
 【疑問】
 ・網羅的なテスト項目抽出の観点では、
  このような単純なテストケースがなぜ漏れたのか理解できない
 
 ・2015年6月のブログ 『興味深い次期東証システムの「二者設計」 』で言及したように、
  高品質の設計のために、十分すぎるほどのコストをかけたにもかかわらず、
  設定値の間違いという単純ミスが発生した理由がわからない
  
 【追記】2020.10.20 朝日記事「東証、取引再開ルール策定へ」から
  ・開発側は、納入前に仕様を確認したが、テストせず
  ・東証も、納入時に十分確認せず
  ・マニュアルにも、新しい設定に関して記載せず
  ・2015年のシステム更新時に、設定変更せず
 
 【追記2】2020.10.21 朝日記事「金融庁 東証立ち入りへ」から
  ・故障機器のバックアップ機能の設定は、誤ってオフになっていた。
  ・システムの仕様が2015年に変更される前は、オフで機能が働いたが、
   変更後は、オンにする必要があった。
 
 以上


2020.10
15年前の悪夢:パスポート電子申請システム再び


 10/1の来年度予算の概算要求の記事の中に、外務省が提案した
 「旅券の電子申請システムの設計・開発など 21億円」がある。
 15年前にほとんど利用されないで廃止された、同様のシステムを思い出した。
 
 【15年前の悪夢】
 ・私の学会発表での引用 →<論文内容>
  End-User-Initiative Approach for Truly Useful e-Government Systems,
  the IADIS e-Sosiety 2010 Conference, pp.123-130 (Mar. 2010).
  (内容抜粋:2.1節で言及)
  2004年に開始したパスポート電子申請システムは、
  133件の利用にとどまり、2006年に停止された。開発コストをこの件数で割ると、
  1件当たりのコストは、10万ドル以上になる。
 
 ・関連記事(2006.8.28)→ 「パスポート電子申請システム廃止で驚きの赤字額」
 (抜粋)投下した費用21億3300万円を133人で割ると、パスポート一冊発行に1600万円
 
 【今回の予算申請理由は?】
  当然、利用率を含めて、優先的に開発する理由があるのでしょうね。
 
 ◎本題と無関係な個人的話題:旅券番号「〜888888」だった
      
 以上


2020.9
感染者情報管理の新システムの問題点とは


 5月下旬から開始された感染者情報管理の新システムに問題点が多く、
 所期の目的を達成できていない
 
 【新システムの概要】
   新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)
 ・厚生労働省が、保健所等の業務負担軽減及び情報共有・把握の迅速化を図るため、
  緊急的な対応として、本システムを開発・導入
 ・利用者:保健所、自治体、医療機関、関係業務の受託者等
 
 【問題点指摘の情報源】
 ・NHK(8/26) 感染者情報の国のデータベース 一部データを把握できず
 ・朝日(9/21) HER-SYS、道半ば コロナ感染者データ、国・自治体で共有 ・・・
 ・朝日(9/29) 感染者集計「ハーシス」への入力、自治体6割「ほぼ保健所が代行」 ・・・
 
 【システムの問題点】
 ・HER-SYSのデータベースで、発症日や職業などのデータを把握できず
 ・集計機能が使えず、7月以降は感染状況の詳細な分析ができず
 ・入力項目が非常に多岐にわたり、保健所や医療機関などの大きな負担
  (入力欄は最大120〜130項目)
 ・感染状況の分析に不可欠の入力必須項目の表示がない
 
 【利用状況の問題点】
 ・医療機関による入力は、感染者が多い都市部で広がっていない
  (回答した318の医療機関の利用率は、41%)
 ・6割の自治体で、医療機関が行う感染者情報の入力を保健所が代行
  (保健所の業務負担軽減が目的のシステムで、逆に業務量増加)
 ・自治体では、検査で陰性だった人の情報入力が負担
 ・入力漏れや間違いが一定程度あり、データの精度を確保できず
 
 【ソフトウェア工学的観点】
 ★システムの要求仕様書が、
  多様なステークホルダー・利用者の視点で作成されていないと思われる。
 
  <関連する学会発表(拙著)>
  ・「システムの利用率は要求分析の対象では?」情報処理学会
    ウィンターワークショップ2010・イン・倉敷 論文集、pp.39-40(Jan.2010)
     →  < 詳細 >
 
 以上


2020.8
品質よりも納期を優先した国のシステムとは


 「全国民に一律10万円給付」に関するオンライン申請の失敗については、
 直近のブログ(6月〜7月)で取り上げてきた。
 朝日の記事(2020.8.25)
  「10万円給付、混乱のオンライン申請 111自治体、取り扱い中止」によれば、
 システム改修について、品質よりも納期を優先したとのことである。
 <記事抜粋>
 ・「減収世帯に30万円」の決定は「全国民に一律10万円」と一変、
  総務省は4/20に申請方法を発表。申請開始は5/1からとされ、
  約1カ月あったシステムの開発期間は、わずか10日間になった
 ・担当官僚の発言
  「官邸、自民や公明の党本部、どこに行っても『とにかく早く配れ』と言われた」
  「通常は本番稼働の前に10日間ほどかけて予行演習し、
   システムの改修をしていくが、今回はその時間がなかった。
   システムトラブルにつながる最低限の欠陥を確認しただけで、
   あとは実際に動かしながら不具合を修正していくしかなかった」
 ・申請が始まり、内閣府は断続的にシステムを改修。(6/15までに51件)
 
 ★品質確認よりも納期遵守を優先したとは、信じがたい暴挙といえる。
 ★国には、ITの専門家がいるはずだが・・・
 ★国は、テスト不十分を理由に銀行システムの更新延期を命じたこともあった
 
 ★拙著「ソフトウェア工学(第3版)」(2014 朝倉書店)「第7章 テスト」抜粋
 『・・・プログラムが変更されると無効になり,
  過去に実行したテストを再びやりなおす回帰テスト(regression testing)が必要になる.
  そこで,各テストケース単位にテストデータ入力から結果の確認までを
  テスト手続きとして記述することにより,テスト実行を自動化することが有効である』
  
 以上


2020.7
「特別定額給付金─何が問題か,今後どう改善すべきか」を読んで


 情報処理学会誌「情報処理 2020年8月号」の特別解説(p.798-p.802)
 「特別定額給付金─何が問題か,今後どう改善すべきか」は、
 直近の下記のブログ2件と関係が深いので興味を持った。
 
  ・2020.7  「国や地方の情報システムが個々ばらばら」との指摘は遅すぎ
  ・2020.6  マイナンバーによるオンライン申請の失敗の原因は?
       
 ★詳細は、→ <別紙参照>
  
  以下に、主なコメントを述べる。
 
 ●法律の問題
 
 ・総務省の情報提供ネットワークシステムを経由して氏名・住所・
  生年月日・性別の基本4情報へのアクセスを可能とするために、
  番号法の別表1と別表2を改正しなかった理由が不明
 
 ●システムの問題
 
 ・国が住民情報ファイルと受付データの突合ツールを提供したにもかかわらず、
  多くの自治体が独自の処理方法をとった理由が不明
 
 ・重複申請、記入ミス多発などの問題が事前にわかっていながら
  放置されていた理由が不明
 
 ・2019年に成立したデジタル手続法では,行政機関間の情報連携によって
  入手・参照できる情報の添付を不要とする規定があるので、
  自治体が保有する世帯主や受給者の情報を申請者に入力させなくても,
  自動処理できた可能性があるのに、そうしなかった理由が不明
 
 ・要求分析段階で、利用形態を想定した使い勝手のよいインタフェースを設定し、
  かつ、事後の想定外の機能追加を容易化するようなWebサービス連携機能を
  実装しておくべきだったと思う。
  
 以上


2020.7
「国や地方の情報システムが個々ばらばら」との指摘は遅すぎ


 2020.7.15のNHKニュース
  『「IT基本法」 改正案の国会提出目指し検討を指示 首相』の中での
 総理大臣の以下の発言に絶句!
 
 『これまで国民本位の行政のデジタル化を阻んできた最大の原因は、
  国や地方の情報システムが個々にばらばらで、
  十分な連携がなされていなかったことにある』
 
 記事によると、このように指摘し、国と地方の情報システムの統合に向けた指針を
 年内に取りまとめるよう指示したとのこと。
 
 このような問題点は、10年以上も前に明らかだった。
 「裸の王様」でなければよいのだが・・・
 
   → 【詳細別紙】
  
 以上


2020.6
マイナンバーによるオンライン申請の失敗の原因は?


 特別定額給付金(10万円)の申請方法に関して、
 6/1までに43自治体がオンライン申請の受け付けを停止した件について、
 情報システム構築(ソフトウェア工学)の観点で考察する。
 
 ●マイナンバーカード総合サイトによると
  マイナンバーとは、「行政の効率化、国民の利便性を高める制度」で、
  マイナンバーカードで「各種行政手続きのオンライン申請」が可能とのこと
 
 ●日経コンピュータの記事
   「10万円オンライン申請は「失敗」だったのか? 自治体を混乱させた本当の要因」
  では、次のような指摘(一部の抜粋)がある。
 
 *今回のオンライン申請では、氏名や住所などの誤入力や二重申請が多く、
  自治体が持つ住民情報との照合に多大な手間がかかった
 
 *一方、行政機関と自治体のシステム間で住民データをやり取りする場合、
  自治体が持つ住民の基本情報(氏名・住所・性別・生年月日)を送信してはならない
  という運用ルールがあり、世帯主や世帯構成員の名前の自動入力ができなかった
 
 ■ソフトウェア工学の視点でのコメント
 
 ★行政システム開発時(要求分析)に、利用形態を想定した使い勝手や
  利用率がしっかり考慮されていない。
 
 ★Webサービス連携を考慮したインタフェース設定になっていない、
  すなわち、想定外の新機能の追加を容易にする仕掛けができていない
 
 
 <以下、過去の関連する学会発表とブログ>
 
 ●関連する学会発表(拙著)
 ・「システムの利用率は要求分析の対象では?」情報処理学会
   ウィンターワークショップ2010・イン・倉敷 論文集、pp.39-40(Jan.2010)
    →  < 詳細
 ・「電子自治体向けフォームベースシステムと検索・記入・提出用ポータルサイト
  の構築法」、情報処理学会 第65回全国大会
  特別トラック「e-Japanの進展」、pp.5575-5578(Mar. 2003)  → < 詳細
 
 ●過去の関連ブログ
 ・2019.12【失敗したe-Japan戦略】 →< 詳細
 ・2019.10【続:利用されない行政システムの開発がなくならない】 →< 詳細
 ・2009.11【いつまで繰り返す電子政府の電子申請システムの無駄】 →< 詳細
 ・2006.4 【e-Japan戦略からIT新改革戦略へ】 →< 詳細
 
   → 【詳細別紙】
  
 以上


2020.5
二重払いの銀行振り込みの後処理について


 最近、特別定額給付金10万円に関する二重払いのニュースが2件あった。
 
 (1)福島県天栄村での二重交付のミス  【記事】 
 天栄村は5/19に、375世帯1162人分となる1億1620万円を二重交付のミスを発表。
 該当世帯に電話や戸別訪問で事実関係の説明や謝罪をするとともに返金を依頼。
 
 (2)寝屋川市での2重給付のミス  【記事】 
 寝屋川市は5/26に、993世帯2196人分の2億1960万円を2重給付のミスを発表。
 該当世帯に電話で謝罪と経緯の説明をし、振込用紙を送って返金してもらう。
 
 以上の例で、該当世帯に連絡して返金依頼をしているのは、当然の後処理と思う。
 
 ★ところが過去に私が経験した給料の2重振込については、
  本人に連絡はなく、二重振込の記録が勝手に消されていた。
  今回のニュースで、改めて当時の後処理は異常と考える。
 
 ■詳細は以下のブログ参照:
 2011.4  【みずほ銀行の振込み処理トラブル】  →  【■証拠資料】 
 
 ★2011年の3月に私の給料が二重に入金されたが、
  Webでは、私の給与が3/18と3/22に振り込まれ,
  3/25に3/22の振込み分の引出の記録があった。
 ★後日、記帳すると、3/22の入金と3/25の出金はなかったことにされていた!
 
 以上


2020.5
「新実存主義」を読んで


 朝日の書評 「新実存主義 マルクス・ガブリエル」(2020.4.18)が目に留まった。

 第一次AIブームの時代に、卒業論文・修士論文(1968〜1971)で、
 デカルトの方法序説、ド・ラ・メトリの人間機械論、エンゲルスの弁証法に言及し、
 人間の思考過程をニューラルネットワークでモデル化した者として、
 また、1960年代後半の大学紛争の渦中で、実存主義に心惹かれた者として、
 この本の次のような特徴に興味を持った:

 ・人間の心とは何か、という古くて新しい問題に、正面から取り組んでいる
 ・心の動きを神経のシナプスの反応によって説明しようとするような、
  心を脳と同一視する自然科学的なアプローチを批判している

 ●興味本位のコメント →  【■詳細別紙】
 
 ★【読後感】
   私の卒業論文・修士論文における、
  人間の思考過程をニューラルネットワークでモデル化して
  コンピュータでシミュレーションするという研究は、
  マルクス・ガブリエルの攻撃対象そのものということになるが、
  もちろん、その時も今も、
  人間の心をコンピュータで解明しつくせるとは思っていない。
 
 以上


2020.3
「人工知能の今:画像認識」を読んで


 人工知能学会誌 Vol.35 No.2 (2020/3)の
 レクチャーシリーズ:「人工知能の今」〔第7 回〕の
 「応用:画像認識」(p.262〜p.270)という解説論文の冒頭に、
 『画像認識は、人間にとっては極めて簡単なタスクだが、計算機で実現するのは極めて困難』
 という表現があり、興味を持った。
 
 ・1970年ごろからの画像認識技術の変遷および最近の深層学習に基づく画像認識技術が
  わかりやすく解説されている。さらに、その問題点についても適切に指摘されている。
 
 ・特定の条件下で特定の機能を果たす画像認識技術の実用化は、工学の分野であり、
  画像の意味内容を認識・理解した人工知能を実現したか否かは重要ではないと思う。

     →【詳細別紙】
 
 以上


2020.1
善の研究とα=ω


 NHKの番組「100分で名著:善の研究」第4回(録画)の中で、以下の表現が目に留まった。
  『絶対矛盾的自己同一』
  『異なるものが異なるままで一つになること』
  『過去と未来との矛盾的自己同一的現在』
 
 その理由は、私が大学院学生の時に考案した表記【A≠Ω α=ω】を連想したためである。
 この表記は、その時期のガリ版刷りの名刺の左肩にも使用している。
  →  修士2年の時の名刺
 
 一方、私の修士論文「思考過程の数学的表現と模擬実験」(1971.3)の
 参考文献57件の17番目に「善の研究」を記載しているが、
 本文での引用がないので、どの部分を参考にしたかは不明である。
  →  17.西田幾多郎:善の研究、岩波書店、1950(原1911)
 
  そこで、今回、【A≠Ω α=ω】の考案には善の研究の読書が
 関係したかもしれないという仮説を立てて、NHKの番組
 「100分で名著:善の研究」のテキストを読んでみることにした。
 
 なお、この表記は以下のホームページで説明している
  →  {Α≠Ω|α=ω}とは?
 
 さらに、拙著「ソフトウエア危機とプログラミングパラダイム」で引用:
  →  ”あとがき”(p.236)
 
 本書の第1、2、3篇の最初の頁で背景として使用:
  →  ”ニーチェの言葉”(p.1, p.41, p.199)
 
 
  →→ 【詳細別紙】
 
 
 メールの署名にも使用:
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 中所武司 明治大学 理工学部 情報科学科 {Α≠Ω|α=ω}
 ***@***.meiji.ac.jp, 044-934-7***, http://www.***/
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