「新生ニューロンは自由なニューロン?」

                (2016.9のブログの詳細 2016.9.5

たまたま見たテレビ番組「記憶」の「新生ニューロン」「神経新生」が

私の48年前の卒業研究で導入した「自由なニューロン」と似ている!

 

【参考番組】

サイエンスZERO「“記憶”のミステリー〜最新脳科学が解き明かす記憶の正体〜」

http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2016-09-04&ch=31&eid=11023&f=126

チャンネル[Eテレ]201694() 午後11:30〜午前0:00(30)

番組内容の詳細

記憶 ― それはヒトの持つ、知識・意識・思考といったあらゆる機能の根幹だ。

では、その記憶はどこに保管され、どう思い出されているのか? 脳科学の長年の謎が、今、急速に解明されつつある。さらに記憶を人工的に作ったり切り離したりと、「記憶を操れる」可能性さえ見えてきたのだ。どうすれば記憶力がよくなるのか、といった素朴な疑問から最先端研究まで、新たなステージに入った“記憶”の科学。記憶の正体に迫る!

 

・視聴時のメモ

*海馬(神経細胞:1億)の短期記憶は,大脳皮質(100億以上)に転送されて長期記憶になる.

*マウスの実験で,新たに生まれる新生ニューロン(神経新生)の発生を抑制すると転送されないが,

 その発生を促進すると短期間で転送される.(寝ているときに転送される)

*人間の老化による記憶力低下は,神経新生の老化が原因

*★この番組で私が最も興味を持った,マウスによる実験:

1.マウスを丸い部屋に入れ,「丸い部屋」を記憶させる

2.マウスに電気ショックを与え「電気ショックの恐怖」を記憶させる

3.オプトジェネティクス技術で,2種類の記憶を同時に活性化すると記憶の結合が起こり,

  この連合記憶により,マウスを丸い部屋に入れると電気ショックの恐怖を想起する.

(★これは,条件反射の条件付けと同じ結果)

 

【私の研究との関連】

私の48年前の卒業研究「条件反射の生体工学的解析」において,

条件反射の記憶を説明するために,下記に引用するように,

入出力ニューロンと無結合の「自由なニューロン」の概念を導入した.

 

<学会発表「条件反射における学習機能に注目した回路モデル」:抜粋>

  http://www.1968start.com/M/bio/olduniv/gakkai1969.html  

条件刺激は、主に単純刺激の組合せからなり、条件反射の形式は新皮質のニューロン間の結合と考えられる。ニューロンの学習機能としては、同時に興奮したニューロン間の結合度を増加させる方式があるが、これでは最初にある程度の結合度を与えるため、これが後の神経網の形成に影響して、複雑な学習をさせることができない。そこで、結合度が0から出発するような学習機能が必要となるため、入出力ニューロンと無結合の「自由なニューロン」を考え、これは同時に興奮したすべてのニューロンと結合してAND回路を形成すると考えた。

 

<卒業論文「条件反射の生体工学的解析」:抜粋>

  http://www.1968start.com/M/bio/olduniv/soturon.htm

(前略)もし神経系の中にあらゆる他の神経細胞との結合係数が0であるような神経細胞があっても,これは永久に孤立したままで,使用されることがない.このような神経細胞を以後は 自由な神経細胞と呼ぶことにすることにする.(中略)やはり,このような条件反射,即ち非線形なものの分離をやらせるためには自己組織系の中に先に述べた 自由な神経細胞の加わってくる必要があると思われる.(後略)

 

【関連記事検索】

https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3%E6%96%B0%E7%94%9F 

ニューロン新生(原稿完成日:2012615日)

(抜粋)

・同義語:神経新生

・成体脳においても、記憶にかかわる海馬体の歯状回部位において、

個体の生涯を通じて新しくニューロンが生み出されていることが明らかになった。

1998年,大人の脳の中でも、海馬の歯状回で、ニューロンが新生していることを見出した

・こうした新生ニューロンは神経幹細胞と呼ばれる細胞がニューロンに分化する事で生じる。

神経幹細胞は、分裂して同じ細胞を作る機能(自己増殖能)と、

分化してニューロンを作る機能(多分化能)をあわせ持つ細胞である。

この神経幹細胞が、成体脳においても、海馬歯状回など、ニューロン新生が起きている部位には

存在しており、新生ニューロンを供給している。

・海馬新生ニューロンは、発達期に存在する幼若タイプのニューロンに近く、発火しやすく神経可塑性に富む

 

以上